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家族と事業の物語 第3章 受け継いだのは両親の「こだわり」
家族と事業の物語 第3章 受け継いだのは両親の「こだわり」
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家族と事業の物語

第3章 受け継いだのは両親の「こだわり」

■独自の医院コンセプト

市国道沿いのI小児歯科医院。院内には架空の小さな町があり、

本屋、おもちゃ屋、公園、秘密基地がある。

子供心をくすぐるミニテーマパークは、何度も通いたくなるよう様々なしかけが

施されている。

 

医院のコンセプト、外観、内装に妥協を許さずこだわった結果、

開院日は大幅に遅れたが、I先生を慕う患者さんはオープン初日から途切れることなく訪れた。

「白く輝く宝石を18歳になったらプレゼントしましょう」という診察テーマを掲げ、

治療をメインとせず0歳からの予防を徹底する。

I先生が創り出した3匹のリスのキャラクターは、「知識」「予防」「治療」のテーマを

それぞれが持ち合わせている。

主役は歯ブラシを持ったリスに設定し、「予防」の意識を定着させる。

また3歳以上からは母子分離で、母親を診察室に原則入れず治療を行う。

このトレーニングは早いうちに自立心が芽生えるというI先生独自の子育て理論である。

 

診察時間が終了してもなお「子供の予防リテラシー向上」について、

I先生、スタッフたちは日付が変わってもディスカッションを続けることもある。

この独特でユニークな医院設計は地元テレビや雑誌に幾度も取り上げられている。

 

■親を尊敬できなかった少年時代

そんなI先生はりんご農家の次男として、長野県の山間部に生まれた。

両親は広大な農園でほぼ休みなく働いていた。

りんごの収穫が1年の仕事納めだとすると、仕事始めは12月の冬支度から始まる。

積雪の重みで枝が折れないように支柱を何本も立て、縄を張る作業は慎重に行われる。

年が明けると、凍える寒さの中、日光が当たりやすいように枝の剪定から害虫の駆除。

春になり花が咲くと摘花、実がなりだすと、

一つの実に十分に栄養が届くよう5つの実の真ん中だけを残す摘果を行う。

また着色と糖度を上げるため、満遍なく太陽の光が当たるよう

実を一つずつ回していく作業も、素人には気が遠くなる作業である。

 

11月の収穫時期には、家族総出で箱詰めする。

色、形、大きさ、糖度などの検品が終わると、ようやく市場に送り出される。

台風の被害で収穫が半分以下になった苦い経験もあるが、

「市場の需要に合わせて早く出荷することはせず、

最高に美味しくなった状態のりんごだけを届けたい。」というこだわりを曲げない。

 

そんなこだわりが過剰な父親と、多少妥協しても生活を守りたい母親との間で

ケンカも絶えなかった。

年中りんごに向き合う両親の仕事に、どちらかといえば

「こんな仕事は絶対したくない」という否定的な気持ちを抱いていた少年時代だった。

 

■「りんご」から溢れる熱いメッセージ
~こだわりの源泉~

戸内海に面するH市の大学に進学したのは、歯科医を志した本当の理由ではなかった。

本音は実家からできるだけ離れて温暖な地へ行きたかったし、

家業は絶対継ぎたくなかった。

歯科を選んだのも手先が器用だから・・・という軽い気持ちがあった。

入学後はキャンパスライフを満喫し、その時代の大多数にありがちな自由気ままな、

目的なき日々を過ごす大学生の一人だった。

 

晩秋のある日、実家から木箱一杯のりんごが届く。

最近東京の百貨店で売られるようになったと長男から聞いてはいたが、

全く関心を示していなかった。

「今年で4回目か・・・」と半ばうんざりしながらではあったが、

何かに導かれるように自然と1個を手に取り齧ってみた。

するとシャキシャキとした食感、優しく柔らかい甘味が口いっぱいに広がり、

それは子供の頃に食べていた味覚と変わらなかった。

それから一気に懐かしい故郷の景色が目に浮かんだ。

脚立の上で葉を摘む汗だくな父の背中、赤子を愛しむように箱詰めをする

華奢な母の手・・・・・一つのりんごに注がれた情熱を強烈に感じた時、

今まで家業に否定的だった自分を悔いて、涙が溢れて止まらなくなった。

今までは「いつでも食べられるから・・・」と友人達に

こだわりの結晶をばら撒いていた自身に対して、更に後悔の念が深まった。

 

~信念を強く持ち続けていれば、いつかこの思いは届く~

 

手紙は入ってなかったが、木箱の中の真赤に輝く傑作から、

そんな両親からのメッセージが聴こえてきた気がした。

 

それからは歯科道を極めようと生き方の本質が180度変わった。

北欧米国への留学、異業種メンターからの学び、吸収できる限り最新最高の情報を収集し、

「こだわりの医院」創りに向け、猪突猛進していく。

 

 

■3つの未来予想図

「想像未来を創造する」という企業コンセプトに共感し、コンサルティングを依頼されたI先生。

プロとしての根幹を無言の背中で教えてくれた両親への感謝の気持ちが強い。

一つの道を究めるということは「こだわり、継続する」ことだと信じている。

カリエスフリー(虫歯のない)地域づくりを目標とし、世間に証明することで

I先生が理想とする予防歯科のあり方に近づく。

 

メディアの出演依頼は断わらず、多忙の中でも発信することをこれからも続ける。

I先生自身のハーフリタイア計画、こども健康パークの設立、

発展途上国に向けた技術支援。

揺るがない目的を持った3つの未来予想図に向け、

独自の資産形成計画はI先生に併走していく。

 

(株式会社インベストメントパートナーズ 
執行役員/ゼネラルマネージャー
資産形成コンサルタント 恒吉雅顕)

 

角田のあとがき

第3章 その2 相続や事業で何を引き継ぐことが大切?

 

から子へと引き継がれるものは様々なものがあります。

財産を残すこと、事業を残すことは親が、子供の幸せを願って

懸命に生きてきた結果であり、子供にとってもたいへん有り難いことです。

 

しかし、財産を相続しても、事業を承継しても

それだけでは子供は幸せになっていないことがあります。

財産を相続したことで子供が財産に頼った人生を送ってしまうこともあります。

安易に事業を引き継いで事業をつぶしてしまい、大きな苦労になることもあります。

 

は、相続や承継において「何を引き継ぐことが大事なのでしょうか」

相続や事業承継の際に、よく考えさせられます。

今回のお話はその答えを示しているような気がしました。

I先生は、もともと次男であることもあって、

また親への反発で親の事業を引き継ぐことはしませんでした。

しかし、歯科医師になってあるとき、本当に大切なことに気づかれた。

それがI先生が引き継いだもっとも大切なものだったと思います。

つまり親の「思い」を承継されたことです。

I先生はひとつのりんごに注がれた親の仕事に対する志が、

ある日涙があふれて止まらないほどの実感を持って伝わってきたのです。

 

~信念を強く持ち続けていれば、いつかこの思いは届く~

手紙は入ってなかったが、木箱の中の真赤に輝く傑作から、

そんな両親からのメッセージが聴こえてきた気がした。

それからは歯科道を極めようと生き方の本質が180度変わった。

北欧米国への留学、異業種メンターからの学び、

吸収したできる限り最新最高の情報を収集し、

「こだわりの医院」創りに向け、猪突猛進していく。」

 

歯科医としての親から引き継いだことが志になったとき、I

先生は何の迷いもなく目的に向かって進んでいけたのだと思います。

 

のお話は私たちが次世代に引き継ぐべきもっとも大切なことが、

何なのかを教えてくれました。

ではこのことをどのように伝えるか。これをしっかりまとめた経営者がおられます。

「家訓」を創られたのです。

 

現代において「家訓」があるということはかなり珍しいでと思われるかもしれません。

しかし長く続いた日本の商家や事業が家訓を引き継いでいる事があります。

この経営者も3代目、3人の息子を経営に参加させることに成功されました。

家訓の効力は大きかったと言えます。

家訓の一部タイトルとその一部の内容だけですが少しご紹介します。

 

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第2条 「先祖の努力」 

 

1.先代への感謝の気持ちを忘れないように

○○家は○○が創業した家業を承継し、今日に至る。

その家業をますます繁栄させなければならない。

これは創業者のおかげであり、子孫はありがたく感謝しなければならない。

 

2.先祖代々からの努力を絶やすべからず

 

3.先代の苦労を十分に理解すること

 

4.先代の教訓を大切にすること

 

第4条 「仕事を進める上で」 

 

1.会社とはどういうものか理解すること

社員が満足し信頼している会社でないと永続しない。

従って、株主と社員のための会社とならなければならない。

株主、経営者、社員の3者が安定した生活をもてる会社にすべきである。

拡大は目的ではなく手段である。失敗する時は拡大時に多い事をよく頭に入れておくこと。

 

2.社是を守り、本来の意味を理解すること

 

3.技術重視で、進化していくこと

 

4.社員の教育に対する考え方を知ること

 

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あまり内容までご紹介することができませんでしたが、お役に立てば幸いです。

 

(税理士法人ネクサス 代表社員 角田 祥子)


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