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家族と事業の物語 第2章 「開業」の葛藤から発見した「人生の目的」
家族と事業の物語 第2章 「開業」の葛藤から発見した「人生の目的」
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家族と事業の物語 

第2章 「開業」の葛藤から発見した「人生の目的」

■開業への想い

N先生は驚異のスピードで来院数が増加している歯科医院の分院長を任されて

2年が過ぎていた。
業績を追い続ける医療法人の自費中心の診療方針には多少違和感があったが、

最新技術をいち早く習得したいと一心不乱に診療をこなしていた。
しかし、いつの日からかグループが掲げる「患者さん第一主義」のスローガンには、

ピントが合わずぼやけて見えだしていた。

この頃から頭にちらつきだした「開業」の二文字。

月100万円の収入を捨てて開業に踏み切る覚悟はあるのか?

それとも医院理念と乖離した状態でこのまま患者さんと向きあっていくのか?
この問いの答えが見つからないままでいた。

 

婚して3年目。
3歳の娘と1歳の息子がいる。
子育てに奮闘している妻に相談するも

「あなたのやりたいことをやったら。あとは何とかなるんじゃない。」

と気丈に振舞う。
しかし妻の笑顔の奥に不安が見え隠れするのを感じると、

なかなか開業に踏み切れないでいた。
子供たちの寝顔をぼんやり眺めていると、生活の安定を維持する親としての責任と、

医療人としての新たな挑戦との間で葛藤している自分がいた。

 
■開業への苦難と壁 親友との再会
現実を直視すると、未知なる航海は得も言えぬ不安が邪魔をする。

開業に失敗し音信不通になった同期のことや、ネガティブな先輩たちの否定的アドバイス。
積みあげられた起業や経営の書籍を貪るように読みふけると、

いつの間にか夜が明けていたこともしばしば。

休日ともなれば家族サービスはおざなりに、

東へ西へとセミナーに奔走する日々が続く。
出口のない迷宮に翻弄され、疲労がピークに達したとき、

大学時代の親友Kがふと頭をよぎる。

 

Kは開業3年目。
高齢で体を壊した父の後を早々に継ぎ、院長としてスタッフ8名の歯科医院を率いている。
歯学部の野球部時代に彼はショート、自身はセカンドという守備位置で、

二遊間をレギュラーとして守り続けた間柄である。
Kは良くも悪くも楽天的で、八方美人な性格もあって各方面に顔が広い。
好奇心旺盛で多趣味なところも、消極的な自分とは対極な存在が

今も縁が切れない一つの理由かもしれない。

そんなKは学生時代から、腹を割ってなんでも話せる唯一の相手である。
「そうゆうことだったら・・・」とK先生を通じて弊社を紹介して頂いた。

紹介されたN先生は、面食らったようだ。無理もない。

弊社は資産形成の計画や、管理をメインとする会社で、

「資産形成」と「開業」は結びつかないので、とまどうのは仕方がないことだった。 

 

しかしK担当のコンサルタントに話を聞いてみると、ライフプランと事業計画の相関性や、

目的ある資産形成の重要性にしだいに理解を深めていく。

「何のために、誰のために、何をやりたいのか。」

「開業」の考え方や計画の立て方は「資産形成」も同じだと、

この問いに対する明確な答えを欲するようになる。

自分自身が最も大事にしたいこと、どうしても譲れない価値観を軸に人生設計をすると、

勤務医のまま医療法人の方針に従っていては、

本当にやりたい真の目的を達成できそうになかった。

N先生に迷いはまだあるものの、この答えを求めるべくコンサルティングを依頼した。

 

■晴れた迷い

コンサルティングの序盤に、

人生を振り返ることで自身の価値観を発見するセッションがある。

歯科医を志した理由は、幼少期から現在に至るまでの心に残る出来事を紐解くことで、

動機の真相が見えてくる。

N先生の場合、大好きだった祖母が63歳という若さで亡くなり、塞ぎ込んでいた6歳の夏、

父と偶然立ち寄った牧場で馬の出産に立会う。

まばたきするのも忘れるほど凝視していたその先には、馬舎の干草を跳ね除けながら、

懸命に立ち上がろうとする仔馬の姿があった。

「おばあちゃんの生まれ変わりかもしれないね。」父がつぶやいた言葉。

その光景は今でも目の奥にしっかりと焼きついて離れない。

小さな生命の誕生に甚く感動したN先生は、

この鮮明な思い出が後に歯科の道を志した原点であることに気づかされる。

また、虐待やいじめがはびこる現代社会で、一人でも多く優しく思いやりのある子供が増えることを望む。

 

まずは子供たちが予防と食について正しい知識が身につく小児歯科クリニックを開設し、

リタイア後は幼少の頃の感動体験をもっと広めるべく、

故郷で子供たちが動物とふれあうことができる牧場をつくることを大きなゴールに据えた。

30年先までのビジョンが見えた瞬間、晴れやかな表情を取り戻したN先生。

そこに「迷い」の二文字は既に消えていた。

 

A県T市の閑静な住宅街。開業から3年が経つN先生の小児歯科クリニックは、

ママさん達からの口コミも広がり、地域にも馴染みはじめていた。

遊び心をくすぐるテーマパークさながらの院内には、

子供たちを飽きさせない人気キャラクターやぬいぐるみ達が出迎え、

笑い声が絶えることはない。

(恒吉 雅顕 / 資産形成コンサルタント)

 

角田のあとがき

第2章 その2 「事業承継の失敗」から発見した「家族を幸せにし、子供を成長させる事業承継」


恒石様のお話を読んで、少し私の苦い経験をお話ししたいと思います。

少し長くなってしまいますが、おつきあいくださいませ。

目的を明確にせず、節税を進めたために起こった悲劇とそのあとの自分の変化です。

 

■相続税対策が人生を狂わせた事業承継

未上場のオーナーの自社株対策を数年がかりで行った時のことです。

一代で株価総額数十億の企業を育て上げられた経営者です。

自社株をそのままにしておくと数十億円の相続税がかかります。

このままでは相続が起こると極端にいえば会社が倒産するか、

相続人がとんでもない借金を背負います。

 

あらゆる方法を駆使して次世代に株を移転していきました。

次世代が後継者に相応しい成長を遂げることよりも、

次世代に株を移すことが目的になっていきました。

結果、株は次世代に移転したもののたいへんなことが起こります。

長男の妻がこの財産価値を知り、あまりにも多額な資産に良心を失っていきました。

長男夫婦は離婚することになり、長男の妻が尋常でないほどの多額な養育費、

財産分与を要求しはじめたのです。

 

長男も有り余るお金があっても意地と憎悪でお金を支払うことに同意しません。

裁判が長期化し夫婦が泥沼の争いになっていきました。

そのことで長男が株を持っていること自体がリスクになっていきました。

つまり、長男にもしものことがあれば株が長男の子供に相続されることになり、

それはとどのつまり長男の妻に株がいくようなものです。

長男に移転した株をもう一度70歳を超える親に戻すことになったのです。

子供に愛情を注ぐ親が、子供に財産をとられまいとする親の姿になってしまったのです。

株が憎悪を増長、親子の愛情さえ変えてしまったのです。

私は節税対策という超近視眼に陥り、節税の前に必要なことは何か、節税の目的は何かを真剣に問わずその仕事をしていたのです。

■家族の和をもたらし、子供を成長させた事業承継

相続税対策をする前にしなければならないことに気づき、

事業承継の取り組みを深めていきました。

 

ファミリーミーティングという場をつくり、

事業について親子の対話の場をつくっていきました。

 

親は自分の仕事への思いや会社の歴史、家族の歴史を話し、

また会社のこと、仕事のことについて夢を子供に話します。

ファミリーミーティングでは相談役であるおじいちゃんの講話、

おばあちゃんの昔の家族のお話しもあります。

会社のことも家族のことも歴史や物語を伝えていきました。

 

その結果今まで兄弟がそれぞれ会社を分割する可能性がありましたが、

兄弟が一体になることで強みを大きくする方向へと変わっていきました。

年に一度も家族で顔を合わすことがなかった兄弟3人でしたが、

家族が理解し合い、配偶者の価値観が共有され、

幼稚園の世代までもが会社に夢を描くようになりました。

ファミリーの人材が輩出され、会社が成長するしくみになっていったのです。

 

さらに毎年のファミリーミーティングでは、孫は大学生から幼稚園まで、

自分の学校でのことなどを発表をし、それぞれが刺激し合い、

より目標が高くなっていきました。

事業承継によって、事業が次世代を育むことができることに気づかされました。

またファミリーミーティングが将来世代の目的を高める場になることことに気づきました。

 

ファミリーミーティングを始めて4年、大学生だった子は親の会社に戻ることを決め、

修行のための就職先を選びました。

最年少の5歳だった子が小学校3年生になり、

彼の成長ぶりが孫たちの楽しみにもなっています。

 

事業が次世代によって承継される場合、それによって家族が幸せになり、

子供が成長する場になることが事業承継の真の目的かもしれません。

(税理士法人ネクサス 代表 角田 祥子)

 

弊社が取り組んでいるファミリーミーティングの詳細はこちら

 


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